ご案内
『今まで生きてきた中で一番幸せです』
今から24年前、バルセロナで金メダルを手にした岩崎恭子(14才)の口から出た素朴な言葉は名言になりました。
彼女が後の人生でそれ以上の幸福感があったのかどうか少し気になりますが、あの日あの時、多くの人が自分の人生を思い返したのではないかと思います。
この名言を思い出すキッカケになったのは以前、ある役者が口にしたセリフでした。
「人生のピークって、俺には一度もなかった気がします」
えっ! ということはピークが一度もないまま人生終了ってこともあるんじゃないの!
…それならせめて舞台上だけでも人生のピークを迎えてもらいたい。
彼の素朴な発言から、明日幸せが訪れる人を描きたい衝動が生まれました。
幸せのど真ん中ではなく、その一歩手前にいる人を描いてみたい。
それが今作の出発点でした。
「脱出前夜」は思い描いてた未来とは全く違う今を生きることになった人たちが
梅雨空の中、脱出に挑む前夜物語です。
“脱出の先には新しい道があるのか? なければ転落するのみだ!”
そんな刹那的でかなり遅れてやってきた青春物語でもあったりします。
作・演出 鮒田直也