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弦楽器はいかに自立していったか?ピアノ三重奏の誕生と変質を追う。
ピアノ三重奏という演奏形態が生まれたのは18世紀後半、バロック時代のトリオ・ソナタというジャンルから派生したと言われています。当時はまだ「伴奏付きソナタ」、つまり鍵盤楽器が主役で、弦楽器はあくまで伴奏的な役割を担うものと考えられていました。その後、弦楽器が次第に独立性を獲得していき、19世紀ヨーロッパ社会のサロン文化の中で、ピアノ三重奏は私的でロマンティックな音楽を担うジャンルとして認められるようになります。
今回は数あるピアノ三重奏曲の中から、ハイドンの「ジプシー」、ベートーヴェンの「大公」、そしてブラームスの第1番を取り上げ、こうした変化の歴史を追っていきます。どれもピアノ・トリオのレパートリーには必ずと言ってよいほど入っている作品ですが、各楽器の役割に注意しながら聴き比べてみると、それぞれが異なる特徴を持った、しかしどれも驚くほど立体的な音楽であることに気がつきます。ピアノ三重奏の歴史、そしてヨーロッパの社会史という2つのポイントから眺めることで、これまで演奏し尽くされ、聴き尽くされてきた名曲がまったく新しいものとして聴こえてくる、そんな体験をしていただければと思います。
▼ハイドン:ピアノ三重奏曲 第25番 ト長調 「ジプシー」 op.73-2 Hob.XV-25 より、第1楽章、第3楽章
▼ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調 「大公」 op.97 より、第1楽章
▼ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 op.8(改訂版)より、第1楽章
郷古 廉(ヴァイオリン)※
水野 優也(チェロ)
水谷 友彦(ピアノ)
松井 拓史(レクチャー)
※出演者が変更になりました
長尾 春花 → 郷古 廉