弦楽器専門店へ行こう!~マツオ商会~

弦楽器専門店

マツオ商会 三軒茶屋近くの好立地にある専門店

1981年の創業以来30年以上にわたって良質な楽器を追い求めてきたマツオ商会。海外の一流製作者、鑑定家を呼び、業界の質向上のための交流も行っている。

三軒茶屋駅を降りて昭和女子大学方向へ賑やかな通りを歩く。ほどなくして目印となるハンバーガーショップが見えてきた。そのビルの2階へ上るとすぐに弦楽器専門店の落ち着いた空間に到着する。

マツオ商会はオールド・イタリアンから入門者用のセットまで、あらゆる品揃えをしているばかりでなく、卸売商としてケースメーカーのbam(バム)などの日本総代理店としての機能もある。世界のトレンドを日本に紹介する役割を担っている。

弦楽器専門店に共通することだが、店頭にディスプレイされている楽器は意外に少ない。そのために「在庫が少ないのかな」などと思われるが早合点してはいけない。予算や好みを告げるとあっという間に数台ほど揃えてくれる。好みを明確に伝えられなくても、楽器選びのプロであるから、時間をかけて納得の行く一本が見つかるだろう。

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チェロも多く揃えている店内。奥にはマッキントッシュの高級オーディオ装置が鎮座している

楽器を選ぶときはまず予算、そして外観や音など、自分の好みを探すというのが手順だ。このとき、意外に「弾き心地」という視点が忘れられていないだろうか。ヴィオラやチェロならばボディサイズの問題がある。ヴァイオリンも微妙ながら差異はあり、手の大きさによっては問題が出てくる。

さらに完全に整備・調整された楽器でもあご宛や肩当て、エンドピンなどの要素で弾き心地が変化する。体にフィットするパーツを使うと、とたんに弾きやすくなったりする。社長の松尾峰男さんは語る。

「フィッティングは楽器との相性もありますが、替えることで音が変化します。また慣れるのにも多少の時間がかかります。単純に交換、ということではないので職人とやりとりしながらベストの状態の調整していきます」

専門店ならではの細やかさがここにある。長く楽器とつきあうということは楽器店と長いつきあいになる、ということだ。

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弦楽器への愛情が尽きることのない松尾社長

【取材記事】世界に広がるネットワークで安心の楽器を提供 マツオ商会

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エレベーターで2階へ。下りるとすぐにお店に

マツオ商会

東京都世田谷区三軒茶屋1-41-9
朝日生命三軒茶屋ビル2F
TEL:03-3410-1915
http://matsuo-tokyo.jp/

ご来店時に「オケ専♪を見た!」とおっしゃってください。

マツオ商会、お勧めの逸品

長年にわたって積み上げたネットワークを駆使し、世界中から良い楽器を仕入れています。どの楽器も作りの良さはもちろん、しっかりと最終調整、整備を行っています。

この他にも幅広い品揃えがあります。(楽器情報は随時更新します)※なお、下記の楽器と価格は取材当時のものです。

今回紹介するヴァイオリンは19世紀後半から20世紀初頭にかけてのモダン・フレンチです。この頃のフランスのヴァイオリン製作は最も活気があった時代です。多くの楽器が作られ、品質は必ずしも一定しているわけではありませんが、マツオ商会ではその中から良いものだけを選び、きちんと調整してご提供しています。

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200万円台の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Charles J.B. COLLIN-MEZIN 1892 (violin Paris)

パリ万博で金賞を受賞したことのある製作家のヴァイオリンです。
J.B.コランメザン(パリ)

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200万円台の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Auguste Darte 1870/1880(violin Mirecourt)

ヴィヨームの工房で工房長を勤めたことのある製作家です。
オーギュスト・ダルテ(ミルクール)

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300万円前後の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Albert Caressa 1929(violin Paris)

アルベルト・カレッサ(パリ)
リュポーの流れをくむ、ガン&ベルナルデル・ファミリー。伝統ある風格はさすが。

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600万円前後の価格帯でチェロを紹介していただきました。

Corrad Belli 2012(cello Cremona)

コラッド・ベッリ(クレモナ)
現代クレモナの人気作家の中でもとりわけ高い評価を得ているベッリ。マツオ商会は長年にわたる信頼関係のもとに、常に彼の厳選された楽器を取りそろえています。特にチェロは貴重です。

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300万円台の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Corrad Belli 2009 (violin Cremona)

コラッド・ベッリ(クレモナ)
クレモナでもトップクラスの職人が製作した逸品。マツオ商会とは30年来のつきあいで信頼関係も抜群です。木工技術はピカイチで、大変すばらしい仕上がりになっています。上級者が満足できる一本。

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200万円前後の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Jan Bartos Grancino copy 1694 (violin Paris)

ヤン・バルトス(パリ、グランチーノのコピー)
バルトスはポーランド出身でクレモナで修業。エリック・ブロットの工房長を経てパリで独立しました。グランチーノのコピーモデルで、やり過ぎ感のないオールド仕上げに味わいがあります。

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100万円前後の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Reinhold Schnabl 2011 (violin Bubenreuth)

ラインホルト・シュナーブル(ブーベンロイト)
シュナーブルはヘフナーなど大手の工場長を歴任、メダルの受賞歴もあります。80歳を超えドイツでも現役最長老の職人。量産品だがすべてが手作業で作られ、質の高いヴァイオリンに仕上がっています。

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30万円~50万円の価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Jan Lorenz 2011 (violin Czech)

ジャン・ロレンツ(チェコ)
チェコの自由化後、国営企業から独立したベテランが工房を設立。質の高いものを作っています。チェコ人はまじめで器用。おおざっぱなところがない、きっちりした製品を送り出しています。

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30万円までの価格帯でヴァイオリンを紹介していただきました。

Pino Classico 2012 (violin Japan)

ピノ・クラシコ(日本)
マツオ商会が企画し、国内で製作。オールド仕上げで安っぽく見えません。国産でこの価格、品質はなかなか見られないでしょう。整備調整がしっかりされているので初級者でも弾きやすい。

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30万円までの価格帯でチェロを紹介していただきました。

Pinocchio (cello China)

ピノキオ(中国)
オリジナル製品。独自企画で中国の工房で製作しています。一般に中国製はムラが多い面もありますが、ここは小さな工房でムラが少ない。材料も良く、仕上がりも良い。チェロでこの価格帯はお買い得。

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※下記記事は取材時期のものです。

世界に広がるネットワークで安心の楽器を提供

卸商として良質な商品を紹介、普及していく一方、価格帯によらず丁寧なセットアップで初級者にも安心できる楽器を提供している。「ヴァイオリン屋さん」を標榜する、工房が自慢の専門店だ。

お客様の厳しい目が高い品質につながる

社長の松尾峰男さんが弦楽器業界に入ったのは偶然だった。たまたま就職したところが老舗の弦楽器卸業で、そもそもこの道を目指していたわけではなかった、と言う。
しかし、10年ほども続けると仕事も覚え、弦楽器に対する知識、愛着が深まり、面白さがわかってきた。そうすると自らもっと多角的に仕事をしてみたいと考え、1981年に独立した。
というのも、独立前の仕事は主にイタリア製新作の買い付けで、日本に紹介、啓蒙するというものだったのだが、弦楽器を知るにつれどうしてもオールドの方へ関心が向くようになってきたのだ。ある意味自然な成り行きであるが、新作だけでなくオールドも含めて弦楽器全体を見わたして幅広くやってみたい、というのが独立したきっかけだった。
1981年にマツオ商会を設立し、弦楽器専門店の顔と共に卸商としての機能も柱になっている。例えば、人気のケースメーカーbam(バム)の日本総代理店になり、機能的でファッショナブルなケースを紹介している。
海外に目を向けると、オールド楽器と新作楽器を同じ店が扱うことは少ないという。それぞれテリトリーが分かれているようだが、日本ではそうはいかず、客の求めに応じてオールドも新作も常に最高の状態で提供しなければならない。
「世界的に見ても日本のお客様の目は厳しいですよ。非常に高いクォリティを求めてうるさく言われます。例えばケースに付いたちょっとした傷、楽器の仕上げの状態など。そういう意味で気を抜けず、質の高い仕事ができる環境だと思っています」

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カメラを向けるとしきりに照れてしまうが、楽器への情熱は人一倍の松尾峰男さん

常に手を抜かない丁寧な仕事が信条

弦楽器専門であればどこもそうであるが、精度の高い良質な仕事をするためには熟練した職人が重要な役割を担っている。
「うちは『ヴァイオリン屋さん』を標榜していて技術の高さを重視しています。ですから職人の質はとても重要ですね。特別なことをやるわけではないですが、いつも手を抜かないようにうるさく言っています」
さらに一般の客以外にも卸商として他の楽器店に納入する。
「同業者の目にさらされますからね。笑われないような仕事をするように気をつけていますよ」
弦楽器はメンテナンスが欠かせない。特に日本では四季の気候の変化が大きいので、細やかな点検が弾きやすさにつながる。
「自動車にたとえると、整備不良の車は走ることは走っても安全であるかは別問題。きちんと整備をして安全で走りやすい状態にする必要があります。楽器も同じで、駒や魂柱の位置、ゆがみだけでなく、ネックの角度も弾きやすさのポイントですが、整備不良に気が付かずに弾いている人も多いです」
店内奥にある工房には3人の職人が黙々と作業を続けている。ここから巣立ち、独立していった職人も多いが、安心して楽器を任せられる体制が出来上がっている。職人それぞれが経験豊富な上、海外から定期的に有名な職人を呼び交流し、研鑽を積んでいる。

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3人体制の工房では常に質の高い仕事をしている

海外の権威ある鑑定家による鑑定会も開催

ところで、オールドの楽器や弓だとその真贋が気になるところだ。鑑定書はないがラベルがそれらしい、ラベルがよくわからない、など愛好家の間で話題になることだ。業者向けではあるが、マツオ商会では世界的に権威のある鑑定家を呼び、鑑定会を催している。クレモナからはモダン・イタリアの権威であるエリック・ブロット、パリからはフレンチボウの権威ジャン・フランソワ・ラファンやフランス弦楽器製作家協会の副会長を務めるジャン・ジャック・ランパルなどそうそうたる顔ぶれだ。こうした鑑定家のお墨付きが得られれば安心できる。
「古い楽器の魅力は骨董的な価値もありますが、なんと言ってもその音。雑音が少なくてピュアなことですね」
松尾さん自身、定期的にヨーロッパへ楽器を買い付けに行くが、古くて良い楽器に出会うとどうしても手に入れたくなる、という。楽器の状態によっては修理、調整に半年から一年くらいかかることもあり、仕入れてすぐに商品にならないことも多いが、じっくりと本来の状態を取り戻し、熟成させていくのもこの仕事の魅力のようだ。

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エレベーターを出るとすぐに店先。小物類の扱いも充実している

幅広い品揃え、どのクラスでも安心して選べる

最近は少子化で弦楽器をはじめる子どもが少なくなってきているが、逆に大人になってからはじめる人が増え、そのような人たちに向けての商品も揃えている。値段が高くなくても良い楽器を選びたい。そうした声にこう答えてくれた。
「ちゃんとした材料を使いしっかりした作りのメーカーは安いランクの楽器でも安心して使えます。値段の差は材料の質がほとんどです。その反対に作りが悪いメーカーだと上のクラスでもお勧めできませんね」
そうした吟味を経て、世界中のメーカーと信頼関係を築き上げてきている。同じラベルであってもその中から良いものを探す。これは古い楽器や新作手工品だけでなく、量産品であってもその厳しい目が向けられている。
このような専門店であればプロ演奏者、上級のアマチュアが訪れるものだと思われがちだが、決してそんなことはない。10万円台の入門ヴァイオリンセットも取り扱っている。オリジナルの設計で中国の工房で作らせているものや国産でオリジナルブランドの商品もある。そうした楽器でもフィッティング、調整には手を抜かない。初心者でも良い音が出れば長く続けられる、という思いからだ。きちんと手を加えることで楽器の鳴りが全く異なってくる、とセットアップの重要性を強調する。
どんな楽器に対しも真摯に向き合う、これが専門店としてのプライドだろうか。安心して楽器選びができるだろう。

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楽器をモチーフにした人形。店内のアクセントになっている

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エレベーターで2階へ。下りるとすぐにお店に

マツオ商会

東京都世田谷区三軒茶屋1-41-9
朝日生命三軒茶屋ビル2F
TEL:03-3410-1915
http://matsuo-tokyo.jp/

ご来店時に「オケ専♪を見た!」とおっしゃってください。

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