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心に届く音楽心理講座

人間が音楽をやめない訳とは

夕暮れ時、マジックアワーと呼ばれる時間帯がある。これは太陽が姿を消した数十分ほど体験できる感動的な時間だ。光源となる太陽が沈んだ直後のため、影が存在せず、暖かくソフトな色に世界が包まれている。この時間帯に生まれる写真はとても感動的である。
この時間帯は多くの人が「美しい」と感じ、自然に戻る感覚を覚える。よく考えてみると、このマジックアワーや夕焼けを見て「美しい」を感じるのはなぜだろう。人間は人それぞれ育った環境も違うし、美に対する価値観も異なるのだから夕焼けを見て「汚い」と思う人がいてもよさそうだ。でも、私の知る限りそのような人に出会ったことがない。おそらく、人間は夕焼けを見て美しいを感じるようにできているような気がする。

人間が感じる感情にはおよそ必ず理由がある。お腹がすけば何か食べたいと思うし、24時間も寝ていなければ眠いと感じる。線香花火を足に落とせば熱くて飛び上がる。どれもこれも、人間が生きていく上で必要な感情や感覚だ。
それならば、夕焼けを見て「美しい」と感じるのはなぜか。もちろんそれには理由がある。その昔、私たちの祖先は移動し、変化できなければ生き残ることができなかった。その場にとどまっているようでは、新しい発見や進化できなかったはずだ。だから、夕焼けを見たときに「美しいな。あの先にはもっと美しいものがあるかもしれない」と感じたはずである。もし、そこで遠くの夕焼けを見ても何も感じなかったなら移動することもなかったし、体力もどんどん衰えていったかもしれない。私たちは美しいものを美しいと感じることができるが、それも立派な能力なのだ。

 

sunset


いよいよ音楽の話題に移ろう。音楽も夕焼けと同じだ。音楽を演奏したり聴いたりして「美しい」「楽しい」「癒される」などと感じることにはそれなりの理由がある。音楽なんて、普通に考えれば生きていく上で必要不可欠とは思えない。音楽を聴いてもお腹は膨らまないし、風雨から身を凌げるわけでもない。別段、存在がなくなったってそれほど影響はないように思える。
でも、それは違う。人類の歴史をさかのぼってみるとそれがわかる。狩猟時代、人は一人では生きていくことができなかったはずだ。一人でふらふらと歩いていたら、すかさず猛獣が狙ってくるわけで、一匹狼で生きていくことなんて無理。必然と集団で生活したり、移動したりする必要があったのだ。集団で生きていきていくには「結束力」が必要だ。仲間意識が生まれ、コミュニケーションが取れる集団はストレスなく生活していたと考えられる。

そこで、登場するのが音楽。その日、獲ってきた獲物や女性たちが集めてきた木の実などで食卓を囲み、みなで食する。そこには音楽が存在していたはずだ。今でこそ、演奏者は特別な才能を持った人がすることと思われがちだがその昔は誰もがパフォーマーだった。皆で歌い、踊り、リズムに乗る。こうすることで、自然と集団の結びつきが強くなり生きていくことができたのだ。

これは今の時代も同じ。スポーツの応援には歌が欠かせない上に、団結力を強めている。一番小さな集団は、親子であるが、その子守歌は母子の大切なコミュニケーションであり、愛情を強める効果がある。学校には校歌があり、国には国歌がある。集団という集団には今の時代も必ず音楽や歌がある。音楽の役割には集団の絆を強めるという大きな力があるのである。

もう一つ音楽が存在する理由としてダーウィンが主張する「性淘汰」説を紹介する。簡単に言うと、遺伝子が進化するには子孫を残さなければならないから、音楽が太古の昔から存在しているということはすなわち「異性を惹きつける」力があるということ。いわゆる「モテる」ということである。確かに、ミュージシャンはなぜかモテる。でもなぜか。
それは、音楽の持つリズムに関係している。いつの時代も男性には「生き残る力」が必要だった。現代で言ってしまえば、「お金を稼ぐ」「家族を養う」ということになるのだろうが、狩猟時代でいえば「獲物を獲ってくる能力」に言い換えることができる。女性たちは男性が獲物を獲ってきてくれなくては生活ができないどころか、命に関わる。だから、男性を見る目はとてつもなくシビアなのだ。「あ、この人シカにキックされたら死んじゃうかも」と思われたらアウト。だからこそ、男性は音楽で女性の目を惹いた。

その頃の音楽と言えばリズムが中心だったというのが多くの学者の共通認識だが、リズム中心ということはそこには「踊り」があったことは想像に難くない。打楽器を中心に男性たちは踊り、歌を歌っていたはず。踊るということは、すなわち「体力」があるということ。体力があり、力があると感じられれば女性は惹かれていく。それは、シカはおろかライオンにだって立ち向かっていく姿を想像できるからだ。女性は自分で獲物を獲ることができないから、生きていく上で男性を見る目は自然と厳しくなる。その厳しい基準の一つに「音楽ができる」ことが無意識にインプットされているのだろう。
現代の男性には「お金を稼ぐ」ことが必要と言ったが、もっと深いところでは「スポーツができる男性」や「音楽ができる男性」に女性たちは無意識に惹かれてしまうようだ。

音楽の持つ力は偉大であり、私たちの生活に欠かせない。食べることや寝ることと同じように音楽は存在し、人類の進化の一部を担ってきた。目に見えない空気の振動の集まりなのに人々は涙を流したり、癒されたり、元気をもらったりする。音楽は人類にとって欠かせない重要な存在なのだ。私たちはこれから先も音楽することをやめないだろう。